「99頭の牛を持つ男」から思うこと

はじめに

前回、インドの昔話を、ご紹介いたしました。 勧善懲悪になれている私たち日本人にとって、 何とも落ち着かない結末でした。

私たち日本人の感覚では、次のようになります。

町の男は、村の男から、 最後の一頭の牛をだまし取り、 「やっと、百頭になった」と、 ほくそ笑みながら、家路を急ぎました。 ところが、その帰り道、崖から大きな岩が落ちてきて、 町の男は、その下敷きとなり、 あっけなく死んでしまいました。 村の男は、優しい奥さんと、かわいい子供たちに囲まれて、 いつまでも幸せに暮らしました。

本当のプラス思考

町の男は、 「なんとか100頭の牛を得たい」と思い、 一生懸命努力をしました。 手段はともかくとしても、 彼はとうとう目標を達成したのです。

皆さんは、彼の思考を、プラス思考だと考えられますか?

このお話は、ひろさちやさんも紹介しておられます。

ひろさちやさんは、次のようにおっしゃいます。

町の男は、100頭の牛を手に入れて、 大いに喜んだことでしょう。 でも、彼は間違いなく、次は120頭ほしいと感じることでしょう。 そうすると、町の男は、 「20頭足りない・・・19頭足りない・・・」と、 毎日、足りない足りないと感じて、 これから何年も暮らしていくのでしょう。 これは、プラス思考ではなく、マイナス思考だと。

プラス思考とマイナス思考、 逆・の発想をすると、なるほどとお感じになりませんか。

お話の続きを考えてみました

インドの昔話に続きがあるとすると、 多分次のようになるように感じます。

 ………  ………  ………  ………  ………  

町の男は、念願の目標を達成して、幸せの絶頂でした。 自分のこれまでの努力が報われたと、 努力をするものには必ず見返りがあると、 自分の人生にも満足していました。

100頭の目標を達成した彼には、 「次は120頭にしよう。」 という新しい目標が、自然に生まれてきたのです。 彼は、それを自分の生きがいだと感じていました。 自分の人生を賭ける新たな目標ができて幸せでさえありました。

そして、また10年間、わき目も振らずにがんばって、 やっとの思いで120頭を達成することができたのです。

「やった!120頭だ。」と大きな幸せに浸りました。

でも、またすぐに、「次は150頭」と思いました。 「30頭足らん・・・・29頭足らん・・・」

そしてまた10年。150頭をもつ身分になりました。 「やった150頭。」と喜びました。

当然「次は200頭」と思いました。 「50頭足らん・・・49頭足らん・・・」と10年。

彼は確かに、200頭の牛を得ることができました。 彼は今、300頭の牛を得ようと考えています。 「100頭足らん・・・99頭足らん・・・98頭足らん・・・」と 毎日を過ごしています。

 ………  ………  ………  ………  ………   

彼は、周りの人達から、 一代で財を築いた英雄と言われています。

でも、その代償として、 何か大切なものを失ってしまったのではないでしょうか。

最後に

私が尊敬している、禅宗の和尚様は、 この話を取り上げて、次のように教えてくださいました。

10年不足を感じ続けて、目標達成したら1週間喜ぶ。 また10年不足を感じて、1週間喜ぶ。

「このサイクルを何回繰り返すと、おまえの人生が終わるのか」

人生は1回しかないのです。 たった1回しかない人生のほとんどの期間を、 不足ばかり感じて生きる。 皆さんは、「もったいない」と思われませんか。

本当の幸せとは何なのか。 今一度じっくり考えてみたいと思います。

column/column006.txt · 最終更新: 2009/05/30 19:13 by 寺本和生
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